The Nightmare Eraser 悪夢を消すもの
 オフィス街のレストランのランチタイムは、目が回るほどに慌ただしい。従業員にとっては毎日が戦争であるが、ランチにやって来る客にとっては貴重な休憩時間であり、殊に女性達にとっては重要なストレス解消の時間でもある。愚痴や噂話、各自の恋愛事情と話のネタは尽きない。
 それは、美耶にとっても例外ではない。

「……でね、建がくれた薬を飲んでから、一回も怖い夢見てないの! 凄くない!? ってちょっと聞いてる?」

「ハイハイ。スゴイスゴイ」

 日替わりランチのハンバーグをフォークに刺しただけで美耶は熱っぽく語るが、正面に座る同僚は反対に食事を終えており、反応も淡白だ。

「冷たーい」

 美耶は不満げに呟(つぶや)いた。

「だって何回目なのその話……! 獏のBなんでしょ。夢にも獏が出てきたんでしょ。いい加減聞き飽きたわよ……」

 早く食べないと置いて行っちゃうよ! と急かす同僚の言葉に美耶は、慌てて食事を再開した。




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