The Nightmare Eraser 悪夢を消すもの
 闇夜の中を、彼女は走っている。ジットリと暑い竹林を抜けて、竹垣の続く屋敷の前を通り過ぎ、小川に架かる橋を渡り、尚も、走り続けている。

 っはぁ、はぁ、ゼィ……。

 また、この夢……。

 自分の足音と不規則な呼吸の間に、ズル……ズル……と、何かを引きずるような音が聞こえる。走りながら振り返っても、やはり姿は見えない。
 しかしすぐ近くにいる気配を、確かに感じる。
 夢だと解っているのに、目を醒ますことが出来ない。繰り返し見ている夢。
 その時、手首に何かが触れた。雨粒よりも冷たくて、もっと大きな、意志を持つもの。

 ィヤッ……!!

 反射的に振り払う。

 嫌だ! 怖い! 早く。早く朝になって!

 突然、声が聞こえた。

「……や……みや……美耶!」

 誰……?

「大丈夫? かなりうなされてから起こしたんだけど……」

 目を開けると、心配そうな男の顔が見えた。

「ん……。えっ、建(タケル)……!? えっと……?」




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