白い吐息
動揺する真人の姿が琴の目にはあまりにも可愛く映って、そっと頬にあてられた手を握る。

「真人、本当に私のこと好き?」

「…うん」

真人の目からも教師としての琴は消えていた。
握られた手から伝わる琴の体温にゾクッとする。

「だったら、これからする話、ちゃんと聞いてね」

「わっ…分かった」

真人は理性を保つため、再び琴から目を反らし、真っ正面を向いた。
琴も真人の態度にそれを感じ、握っていた手を離した。

「先生の…、私の好きだった先生の話なの」

琴は恐る恐る話し始めた。
真人はいつの間にか、目をつぶっていた。

「…その先生はね、私が高校2年のときに赴任してきたの。真人と同じでクラスの人気者だった。先生は英語が担当で会えるのは1日1回位だったけど、いつしか私は…先生の虜になってた…」

「恋、したんだね」

琴が言葉に息詰まると真人はさりげなくフォローする。
ただ、目はずっとつぶっている。

「最初は憧れだったかもしれない。先生カッコよかったし…」

「そうなんだ」

「高校3年になって、先生が外国文化研究部っての作ったの。顧問は勿論先生。私、自分を知ってもらうチャンスだと思って、思い切って入部してみたの。そしたらビックリ…」

「ビックリ?」

「入部希望者は私だけだった。幽霊部員の2年生が何人かいたけどね。先生は3年の私が入部したことに驚いてた。…でも、おかげで2人だけの部活がスタートできたの」

「…なんか、オレたちに似てるね」

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