白い吐息
「素直に話すね…」
怖がってたって
仕方ないもの…
「その先生、真人にスゴく似てるんだ…」
真人からの返事はなかった。
しかし、琴は続けた。
「表情、話し方、小さな仕草…そっくりなんだよね…」
名前のことだけは、どうしても言えなかった。
彼を「真人」と呼んでいたかったから。
それだけは言いたくないと思う臆病な琴がいた。
目を閉じたまま、真人が何かを返してくれるまで、琴は息を止めて待った。
真人が動揺しているのは見なくても分かっていた。
ただ、現実を直視する勇気がなかった。
「…私は…真人に…」
つばを飲む。
「……」
「…私が、真人を好きになったのは……あなたが先生に似てるからかもしれない…」
そう言い切ると、琴は真人の顔をそっと横目で見た。
つぶっていたはずの彼の目がまっすぐ何処かを見ていた。
「…ゴメンね」
小さな声で呟く。
「何で謝るの?」
何処かを見ながら真人は尋ねた。
「…だって、こんな中途半端なのって嫌でしょ?」
「別に…」
真人は琴の顔を見て微笑んだ。
とても優しい瞳で。