白い吐息
「好きだったのね」
「……」
琴が一粒涙を零すと、関口先生は彼女をそっと抱き寄せた。
白衣の腕の中で、琴は小さい呼吸を何度も繰り返していた。
セミロングの髪を撫でられながら、琴が思い出すのは甘くも苦くもない青春時代の恋心。
「白居先生…」
思わず漏れた言葉。
深い闇の中から、悲しく響く壊れたオルゴールのような声だった。
もしも…
もしも私が…
ちゃんと想いを伝えられていたら、
こんなに辛く
こんなに悲しい未来には
なっていなかったでしょう
それとも
やはりこれは
【運命】だったのかな?
これから起こることが、それを証明しようとは
この時はまだ誰にも分からなかった。