白い吐息
「関口先生…」
「一応…ノックはしたんだけど…」
関口先生は頬を薄桃色に染め、慌ててハンカチで汗をふいた。
先生が動揺する姿は何か滑稽で琴は思わずクスクス笑ってしまった。
そんな琴を見て、真人もにこりと微笑んだ。
関口先生を残して、2人は琴の住むアパートまでを歩いていた。
「琴子って、関口先生と仲良いんだね」
「う〜ん…親みたいなもんかな?何でも話せる」
「親か…」
真人は星の見えない空を見上げた。
「真人にちゃんと告白できたのも、全部関口先生のおかげだもん」
ふと、隣にいたはずの真人が居なくなっていたことに気付いた琴は慌てて振り返った。
少し離れた所に立ち止まり、黙って夜空を見上げたままの真人。
「真人?」
「…琴子、オレ、琴子のこと大事にする」
白い息が夜空に向かって放たれる。
「……?」
きょとんとする琴。
「…大事にするよ」
真人は琴の瞳に視線を返すと、真剣な目付きでそう言った。
いつものあどけない表情はどこにもなく、言葉には重みを感じる。
琴はただコクリと頷いた。
「じゃ!」
真人は左手をあげると、琴に背を向け走りだした。