白い吐息
「別にお前には関係ないだろ」
真人は皆人に目を合わすことなく彼の前を横切った。
「関係あるよ。」
後ろから聞こえる声に立ち止まる真人。
「これ以上、兄貴に振り回されたくないからね」
「……」
真人は歯を噛み締めると急いで自室に駆け込んだ。
バタン!
部屋の灯りも付けず、真人はベッドにうつ伏せの状態で倒れこんだ。
クソ…
真人は手を拳にして何度もフワフワの布団を殴る。
そして息を荒くし、耳を塞ぐように頭を抱えた。
あの時…
何故オレが生き残ったんだ…
生き残るのにふさわしいのは…
あの人だったのに…
「助けて…琴子…」
琴子…
冷たい部屋の中に月の光だけが入ってくる。
それはとても不気味な光景だった。
怒りと恐怖に震えながら、真人は眠りに落ちた。
『お前は愛されてる』
『愛されてなんかないよ』
『自分で気付いてないだけだ…』
『僕はいない方が良かったんだよ』
『何で?』
『あなたを…あなたのお母さんを…傷つけなくてすんだ』
『…それは違う』
『じゃあ、あなたは何の為に僕に会いにきたの?』