白い吐息
「こういう雑務は新人のものですから」
皮肉たっぷりに言う琴。
「今日の長谷川先生は威厳がありますね。…好きですよ、そういう女性も」
いつもと変わらない森下の態度に琴はカチンときた。
琴が強きに出れる理由、それは森下の右腕、右足が包帯でグルグルに固定されていたからだった。
他にも数ヶ所にガーゼや絆創膏があてられていた。
「それに私、今は先生のクラスを預かっているものですから」
「それは校長から聞きました」
森下は薄気味悪く微笑む。
「花瓶ありますか?」
琴はわざと目をそらした。
「そこの洗面台の下にありますよ」
琴は手早く花瓶に花を移した。
そして日当たりのいい窓際の棚に持っていく。
「長谷川先生、僕に何か聞きに来たんじゃないんですか?」
森下は琴の顔を伺った。
「……」
琴の手が止まる。
「白居のことですね」
ドキッとする琴。
「図星か…」
森下の言葉が琴を動揺させる。
「…白居くんは、今は私が預かっている大事な生徒ですから…だから…」
琴は森下に背を向けながら話した。
「無理しなくてもいいですよ。僕は全て知っているんだから」
「全て…」
呟く琴。