白い吐息
看護師が入れ違いに中に入り、ドアがスーっと閉じられる。
琴は、そのドアにもたれかかった。
「どうかしたんですか森下さん?お見舞いの方、ずいぶん血相変えてらっしゃいましたけど」
「あぁ、いいのいいの。気にしないで。ヒステリックな女でさ、マキちゃんとは大違い」
「もぅ、森下さんたら〜いつも調子がいいんだから」
病室から漏れる声に琴の苛々がつのった。
あんな奴の言うこと
信じてたまるか!
真人を悪者にする奴なんか
許さない!
「許さない…」
琴はエレベーターのボタンを連打した。
「おはよう先生!」
爽やかな声と共に後ろから肩をたたかれる琴。
「真…白居くん」
いつもの通学路、少しビックリして振り返ると真人の笑顔があった。
結局真人に関する事件や噂のことは何ひとつ解らないまま試験期間に突入してしまった。
「登校、早くない?」
「試験中はこん位が普通じゃね?先生が遅いんだよ」
ごもっともである。
真人が琴に対しで先生゙と呼ぶのは周りに他の生徒がいるからだ。
遅刻魔の琴が生徒たちと同じ時間に学校へ向かうのはよくあることだった。
しかし、試験期間では初めてである。