白い吐息
「生徒のことを聞きに行くって言ってたから、口実かと思ったんですよね」
「生徒…」
関口先生の脳裏にポカンと真人の顔が浮かぶ。
「恋の悩みなら相談してくれればいいのに…」
「きっと、誰にも相談できない悩みなのよ」
しんみりした目で窓際のベッドを眺めながら、関口先生はまた一口お茶で喉を湿らせた。
『好きな子はいるのか?』
『えっ?』
『小6だろ。好きな女子の一人や二人いるんじゃないか?』
『いないですよ。それに、あなたには関係ない』
『相変わらず冷めてるな』
『別に…』
『好きな女がいるって幸せなことだぞ。世界が変わって見える。何に失敗しても後悔することのない人生が送れてる気がするんだ』
『…いるんですか?…その…好きな人?』
『片思いだけどな』
『…どんな人?』
『可愛い』
『へぇ…』
『頑固で素直じゃないけど愛しいんだ』
『学校の人?』
『うん』
『先生?』
『いや、生徒』
『……』
『罪だろ?』
罪だね―
でも
今なら解るよ
あなたの言っていたこと
後悔はしてないから…