白い吐息
彼女の言葉に生徒たちが騒めき出す。

あばら骨骨折?

琴も初めて知る事実だった。
お見舞いに行ったときは、そこまで詳しく解らなかったし、他の教師もそんなことは話してなかった。

「とっ…とりあえず、みんな落ち着いて」

「静かにしろよ!」

戸部の一喝。
次第に修まるガヤつき。

琴は何故か真人のことが気になった。
森下の話題は真人の前では控えたかったから。
視線が泳ぐ。


「終業式、森下先生は来るんですか?」


声の主と目が合う。
キレイな瞳。
少し懐かしい声色。


真人……


冷静な表情で問い掛けられた。


「…解りません」

琴はそれしか言えなかった。
同時に、森下が復帰しなければ今年いっぱい担任代行が続くことを思い出した。


真人は何を恐れているのか?

ますます気になる琴だった。





「真人!」

下駄箱から靴を取り出そうとする真人の肩を戸部が叩いた。

「一緒に帰ろうぜ」

「おう」

戸部に微笑みを返す真人。



「試験、どーだった?」

駅までの道を並んで歩く2人。

「まぁまぁかな…」

「オレは山完全に外したわ」

「御愁傷様」

「なぁ…」

戸部が少し俯く。

「何だよ?」

「森下って、マジに事件なのかな?」

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