白い吐息
「でも…」
琴は続けた。
目にうっすら涙を浮かべながら。
「…昨日、助けてって言ってたじゃない…だから…他にも理由があるのかと…」
真人は相変わらず下を向いたままだった。
しばらく黙っていた彼は何か意を決したように話し始めた。
「…最近さ、夢みるんだ。とても恐い夢」
「夢?」
「内容は覚えてない…。ただ、目を覚ますとスゴく淋しくてたまらない」
「真人…」
「時々、幻も見たりする…白昼夢っていうのかな?」
真人はゆっくり顔を上げた。
そして目の前にいる琴の顔を寂しげな瞳で包んだ。
「恐くて、淋しくて、誰かに助けて欲しくなる。そんな時、琴子の顔を思い出すんだ」
「私?」
「琴子の顔を思い出すと、安心する…落ち着くんだ」
いつもと違った弱気な真人。
初めて見る表情。
琴の心が締め付けられる。
真人の叫び声が聞こえるような気がしていた。
「だから、少しの間でいいから、琴子の側に居たい。…居させて…下さい」
琴はテーブルを回り込んで震える真人を抱き締めた。
「わかった」
耳元で強く囁く。
「ありがとう」
涙声の真人に琴の鼓動は高まるばかりだった。
愛しくて、切なくて、苦しくて。