白い吐息
「琴子、いい匂い」
いつもの真人がやっと帰ってきた。
「本当に…何もしないの?」
「何もって?」
「…言わせないでよ…」
「何もしないよ。琴子が望まない限りわね」
真人はクスっと笑った。
同時に琴はまた真っ赤になって真人から離れた。
「ご飯食べなきゃ!冷めちゃう!」
「はーい」
こうして琴と真人の秘密の生活が幕をあげた。
「何かあった?」
そう声をかけてきたのは関口先生だった。
朝から職員室で採点作業に励んでいる琴。
コーヒーカップを持った関口先生が隣の森下先生の席に座る。
「えっ?何でですか?」
「いや、顔がニヤついてて気持ち悪いから」
「…言い過ぎですよ」
「昨日は暗い顔してたのに」
「あっ…」
「仕事も順調にこなしているじゃない」
「はぁ…」
琴は頭をかく。
「白居くんと何かあった?」
関口先生は耳元で呟いた。
「なっ!何もないですよぉ!」
思わず立ち上がりそうになる琴。
その大きな声に他の教師たちの視線が集まる。
「バカね」
「関口先生が変なこと言うからですよ」
「まぁ、元気ならいいのよ」
先生に頭をポンっと叩かれ、琴は微笑んだ。