白い吐息
次の日の休み時間、琴は頼まれものを届けに2-Bの教室を訪れた。
昨日と同じように真人は机の上に座っていた。
そして、彼を取り囲むように数人の男女が集まっていた。
女子生徒に腕を組まれながら笑っている真人。
「あっ!先生」
声を掛けてきたのは、真人の友人の戸部という生徒だった。
「昨日は大丈夫だった?」
「うん。ありがとう。迷惑かけてごめんね」
琴は優しく微笑んだ。
琴が用事を済ませ、出ていくまで、真人は彼女のことを見ることはなかった。
まるで眼中に入っていないかのように。
くしゃっとした笑顔は彼の周りの生徒にだけ向けられていた。
琴はそれがなんだか、ものすごく寂しく感じたのだ。
そして、そんな自分がとても恥ずかしかった。