白い吐息

「この血…」

誰のだ?


前にも似たようなことがあった。

あれは、琴子を森下から助けた日の晩…


記憶がなくなり、目覚めると知らない場所にいた…



何なんだ…



琴子には言えない…

心配をかけたくない…




でも…

無性に会いたくなる…




琴子…


「助けて…」











三学期が始まった。

「おはようございます」

「おはようございます」

職員室。
何事もなかったかのように挨拶を交わす琴と森下。
琴は若干無理をしていたが、森下が本当に必要以外何も話し掛けてこない様子なので少しは安心した。

「おはよう」

後ろから肩に手を置く声の主は勿論関口先生だった。

「おはようございます」

「面倒臭いわね、始業式」

だるそうに語る関口先生にホッとする琴。


大丈夫…
誰にもバレてない…

「ちょっと、聞いてる?」

「聞いてますよ…始業式が面倒臭いなんて、教師が言ったらダメですって」

「だって体育館寒いじゃない。生徒も気の毒よね。しかも校長の話は長いし…」

「確かに…」

琴はクスクス笑った。

「貧血で倒れる生徒を介護する身にもなってもらいたいわね」

< 219 / 345 >

この作品をシェア

pagetop