白い吐息
『…どうしたら、自分を好きになれるの?』
『何かひとつでも大事なものを見つけられたら、きっと好きになれるよ』
「大事なもの…」
日当たりのいい廊下を歩きながら、真人は呟いた。
「白居」
後ろから引き止める声。
真人はうつろな瞳で振り向いた。
「…最近、変わったことないか?」
真人の瞳に映ったのは腕組みをした森下だった。
「…何か用ですか?」
声を尖らせる真人。
「面白い情報が手に入ったんだ」
「情報?」
「琴子さんのことでね」
琴子…
「その名前で読んでいいのはオレだけだ」
「小さいことで怒るなよ。大事な情報なんだ。顔貸してくれ…」
真面目な表情で語る森下に違和感を抱き、真人は彼についていった。
その日、琴は真人に会うことはなかった。
生物室にこもり、何度も電話をする琴。
しかし真人の携帯は切断されたままだった。
とりあえずメールを送ってみる。
《真人。会いたいです》
しかし、何日経ってもそのメールの返信は無かった。
学校へ来てることは出席簿を見て確認できた。
何度か教室の前も通ったりした。
クラスの仲間に囲まれて笑っている真人。