白い吐息
振り返る森下。

「僕はね、うちのクラスの白居には個人的な恨みがあるんですよ」

それでも変わらない森下の表情。

「それは聞いたわ」

「僕の従兄弟は教師をしてました」

「従兄弟?」

「父の姉の息子です」

「…それが?」

眉をしかめる関口先生。

「憧れの存在だった…。でも…」

「でも?」

「死んだんですよ」

「……?」

「彼は、うちのクラスの白居に殺されたんだ…」

急に目力が強くなり、声を震わせる森下。

「殺された?」

「5年前に…アイツのせいで…」

それだけ言うと、森下は階段を駆け下りて行った。


5年前…


教師……




「まさか…」

関口先生は手で口に蓋をした。










『家族って…いいもの?』

『そーだな、オレには母親しかいないから分からない部分あるけど、いいものだと思うよ』

『僕も…そう思える日が来るかな…』

『くるよ』

『……』

『オレの夢、ひとつ教えてやろうか?』

『夢?』

『将来の夢』

『何?』

『暖かい家庭を築くこと』

『それが…夢?』

『地味か?』

『…そうじゃないけど』

『結婚して、可愛いお嫁さんがいて、子供が2人位いて、決して裕福じゃないけど幸せな家庭』

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