白い吐息
「…もう、待たなくていいよ」
「何で?」
直球な真人の言葉に琴はすかさず返した。
「戸部から聞いてるんだろ、田口先生のこと」
「それとこれとは別だよ。私…まだ別れてない」
「そうだったっけ?オレはとっくに終わってたけど」
真人…
「1人で勝手に終わらないでよ…」
「もう……嫌なんだ…」
「何が?」
「長谷川先生の側にいるのが…」
長谷川先生…
何で…
何で…
何で琴子って呼んでくれないの…
「悪夢…まだ続いてるよ」
「だったら…何で?」
琴は涙に濡れた顔を隠すように、真人に背を向けた。
「原因が分かったんだ。悪夢の原因」
「…何?」
「長谷川先生だよ…」
真人の口から
先生と呼ばれるたび、凍り付いていく琴の心。
「…私?…何で、何で私なの…?」
琴は必死に喋る。
「オレ、自殺未遂の経験があるんだ」
それは知ってるよ…
「その原因に…先生が少し……いや、直接の原因じゃないけど…」
口籠もる真人。
「なんなの…?」
「先生といると、そのこと思い出して、…夢まで見て…嫌…なんだ」
静かになると、琴のヒクヒクとした声が教室に響く。
それでも真人は話続けた。
「正直、先生といるの辛いんだよね。だから…」