白い吐息
「…何?」
「私と別れる理由は…それだけが原因?」
「…それだけ?」
「自殺未遂の悪夢だけが原因なの?」
これだけは
確かにしたいの…
「…うん。それだけ…だよ」
「…良かった」
琴は袖で涙を拭った。
「良かった?」
「ううん…こっちの話…」
あれが直接の原因でないだけでも救われる…
琴は座席に座ったまま微動だにしなかった。
ただただ、静かに時間が過ぎるだけ。
でも、真人といれる時間を彼女は噛み締めていた。
「…先生、もう…行っていいかな?」
「……」
「…先生?」
「白居くん、もう部活にも来ないの…?」
「来たら…変だろ」
「そうだね…」
ホントにサヨナラなんだ…
琴はゆっくり立ち上がり、真人の方を向く。
夕日に照らされたキレイな顔。
笑った顔が好きだったな…
「白居くん、田口先生のことヨロシクね」
琴は精一杯の笑顔で告げた。
「…ぁ…うん」
その時の真人の悲しそうな顔は夕日にさえぎられ琴には届かなかった。
「じゃ」
真人はそう言うと、慌てたように素早く生物室を立ち去った。
たった…2ヶ月…
いや、もっと短いかな…