白い吐息
1人残された琴は黒板の真ん前、いつも真人が座っていた席に着く。

目の前の黒板はチョークのカスひとつなくキレイだった。
でも、琴にはある文字が見えていた。


I love Koto.


決して、消え去ることない悲しい記憶がまたひとつ増えた。

たまらなく流れだす涙。
押さえきれない涙。
止まることのない涙。


真人…


琴は声を押し殺しながら、息もつけないほど泣いた。
ぐちゃぐちゃになり、ヒーヒーと子供のように泣き響かせた。



真人…

まだ

こんなに

こんなに好きなのに…



浮かんでくる真人の顔、笑った顔。
琴子と呼ぶ声、明るい声。
暖かな温もり、抱き締められたときの温もり。


全て失ってしまったの…


なんで…?



どうして…?




泣きながら、琴は思った。


こんなに泣いたのは、白居先生が死んでしまったとき以来…

と。













『琴子の前世は、ヨーロッパな貴族だって』

『はぃ?』

『だから、ヨーロッパの…』

『そうじゃなくて、何なんですか?』

『前世占い』

『先生、占いなんか信じるんだ…』

『琴子は信じないの?』

『だって…朝のテレビの占いとか、あまり当たらないし』

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