白い吐息
「…いや。お前本当に長谷川先生と別れたんだな」
「あんなこと聞かされたら…別れるしかないじゃないですか」
「…そうか」
「オレの罪は重いから…償いきれないほど」
真人は鼻をすする。
「目、赤いな?」
「先生も赤いですよ」
「気のせいだよ…」
真人は無言で教室を後にした。
教卓に座る森下。
唸るように髪をかきむしっていた。
「どこにいるんだ…真人兄さん」
静かに保健室のドアが開いた。
関口先生は全て分かっているかの用に、優しい笑顔に少し涙を浮かべて琴を向かい入れてくれた。
その笑顔に母を重ね、琴は関口先生に抱きつき、また子供のようにエンエンと泣いた。
泣くしかなかった。
その時の琴に、他の言葉なんてみつからなかった。
ただ暖かい心に触れていたかった。
「…後で、話があるわ」
琴の髪を撫でながら関口先生がつぶやいた。
疑問符の打たれた顔を上げる琴。
「私の勘違いかもしれないけど、とても重大な話よ」
「……」
「今は話さない。今日は帰って、ゆっくり眠りなさい…」
琴はほんのりと口元に笑みを浮かべて頷いた。
きっと帰っても眠れないだろう…と、思いながら。