白い吐息

『は?』

『受験って…何の為にするんだろう』

『そりゃ、大学合格の為だろ』

『そーいう意味じゃなくて…』

『勉強、やめたいのか?』

『やめたい訳ではないけど、何の為に勉強して、それがどう人生で役に立つか分からないから…』

『琴子は難しく考えるのが好きだな』

『笑わないで下さい。真剣なんだから』

『ゴメンゴメン、勉強の意味かぁ…。オレも昔考えたことがあるよ』

『先生も?』

『数学の方程式とか、歴史の年号とか、何の役に立つのかなって』

『で、答えは出たんですか?!』

『いゃ…』

『……なんだ』

『答えなんてないんじゃないかな』

『ない?』

『勉強する意味がないじゃなくて、意味がないから勉強するみたいな』

『…?』

『生活の知恵は自然に身につくだろ、例えば…喋ることとか、汚れたものに触ったら手を洗うとか』

『…はい』

『でも、学校で教えてる勉強は自然には身につかない。だからわざわざ勉強する』

『…なるほど…』

『人は学びたがりの生き物だと思うんだよ』

『それって、知りたがりってやつ?』

『まぁな…』

『そっか〜…』

『オレなりの考えだけどね』

< 240 / 345 >

この作品をシェア

pagetop