白い吐息

『もう大丈夫なのか?』

『平気!』

『オレに移すなよ…』

『なにそれ?』

『オレの親父、風邪引いて肺炎になって死んだんだって』

『…そうなんですか』

『って昔、お袋が言ってたけど嘘みたいだな』

『はっ?』

『だから、嘘』

『なにそれ!』

『琴子の口癖は"なにそれ"か』

『先生が変なこと言うからだよ』

『…怒るなよ』

『怒るよ。命をバカにしないで』

『……』

『何…?』

『優しいな、お前』





なにそれ…




本当のこと、教えてくれれば良かったのに…












「ここから、オレ等が通ってた小学校が近いんです」

琴はつい数週間前に訪れたあの現場に立っていた。

バラもクッキーも既になくなっていた。

「戸部くん、白居くんがしゃがんでたって場所ってここなの?」

「オレも遠くから見てたから具体的には分からないけど、ここら辺だと思う」

「お墓はともかく、事故現場まで知ってるってことは白居先生と白居くん、かなり身近な存在だったってことになるわよね」

ため息まじりで喋る関口先生。


「白居…真人…」

琴がボソっと呟く。

「事故と白居くん、関係あるかしら?」

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