白い吐息
「長谷川先生のことだよ」
「…その話なら、もう終わったことだから」
不機嫌な顔をする真人。
「長谷川先生は、まだ終わってない。お前に話があるって言ってる」
「だから、もういいんだって。オレは話すことなんかないし」
「嘘つくなよ!」
戸部は真人を壁に押しつけた。
「って〜な…」
「長谷川先生は、今回で終わりにしようとしてる…お前に、本当のことを話してもらえたら、それでいいって思ってるんだ」
真人の肩に置かれた戸部の手に力が入る。
「…話なんてない」
真人は顔を背けた。
「オレは知ってる。本当のこと…」
戸部の瞳から涙が一粒落ちた。
「…戸部?」
「長谷川先生も…知ってるんだ。ただ…お前の口から真実を聞きたいんだ」
「真実…?」
「白居真人って5年前に死んだ教師のこと」
「……しっ…知らない…そんな奴…」
急に青ざめる真人。
「嘘つくな!…長谷川先生の好きだった教師だろ!…お前…墓参りしてたじゃねーか…」
戸部は泣き崩れるように地べたに座った。
「…つけたのか?」
「ああ…」
「何で…」
「…お前が…心配だからだよ…」
真人のズボンの裾を掴む戸部。