白い吐息
「…考えておきます」
小さな声でそう答えると、真人は保健室を後にした。
「…みんなあなたの味方なのよ」
誰も居ない保健室で関口先生が呟いた。
『生徒さんの名前って何ていうの?』
『それは教えられないな』
『何で?』
『名前を教えたくないほど好きだからだよ』
『へぇ…』
『キレイな名前だよ』
琴…
『何文字?』
『一文字!』
琴…
『梅とか?』
『ばーさんじゃねーぞ』
『ニックネームとかあるの?』
『あぁ、呼びにくいからオレがつけた』
琴子…
『呼びにくいんだ』
『オレだけかな?』
『じゃあ、真人さんだけが呼んでるニックネームなんだ』
『まあね』
琴子…
琴子……
それすら奪ってしまっていた…
トントン…
保健室のドアを叩く音にハッとして琴は我に返った。
そっとドアを開けたのは真人だった。
「…来てくれたんだ、ありがとう」
琴が微笑む。
真人は何も言わずドアを閉めた。
この間会ったばかりなのに懐かしい…
真人の顔を見て琴は思った。
「あの…」
「今日は白居くんに謝りたかっただけなの」