白い吐息

「謝る?」

「白居先生のこと、名前のこと…伏せてたから」

「…それは…別に」

真人の目が琴を見ることはなかった。

「白居くんと白居先生が知り合いだってこと、戸部くんから聞いたよ。戸部くんは…あなたのことをスゴく心配してた」

「そう…」

そっけない真人の返事に悲しくなる琴。

「…白居先生とは親戚なの?」

わざとそう尋ねる琴。

「……」

「答えたくないんだね」

琴は後ろを向いて、人差し指で少し溢れた涙をすくった。

「…白居先生が気になる?」

真人が尋ねる。

「…うん」

琴子…


「…白居先生が好き?」

「それは、昔の話だよ」

琴子……


「もし、生きてたら?」

「……」

「もし…」

「白居先生は…もう居ないんだよ…」


琴子…



琴子…







「琴子…」

呟く声に、琴が振り向いた。

「…白居くん?」


「琴子…」

違う…

違う…

この声は……!




「琴子…オレだよ」

「…しっ白居先生…?」



まさか……!


夢!


何で…!?



「驚かせて、ゴメン」

「なっ…何で?白居くんは?…真人は?」

頭を抱えてパニくる琴。

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