白い吐息
「今は、眠ってもらってる」
目の前にいるのは、確かに高校生の真人だった。
しかし、その声も仕草も、琴が忘れたことのない白居先生のものだった。
「眠って…るって?」
「今は、彼に身体を貸してもらってるんだ」
「からだ…を?」
「ずっと、彼の中で眠っていた。琴子、君が目覚めさせてくれたんじゃないか?」
琴は唾を飲んだ。
「何の…ことですか?」
「オレは白居真人くんの魂となって、ずっと待ってたんだ…」
魂…?
「待ってた?」
「琴子と、巡り合える日を…」
真人の顔をした白居先生は涙を零した。
「長い間、ずっとその時がくるのを…叶わないであろう願いを…」
「先生…」
「でも奇跡は起こった。あの日…君と再会して…オレは目覚めることが出来たんだ」
あの日……?
「君がオレの名前を呼んでくれた…」
それは、真人と初めて出会った日のことだった。
あのクシャっとした笑顔に心奪われた日…
真人の教室で倒れた日…
先生を恋しくなった日…
"一目惚れって信じる?"
「琴子?」
「今…真人はどうしてるんですか?眠ってるって…」
「彼は多分悪夢を見てる」