白い吐息
琴は一瞬世界が止まったように思えた。

「嘘だ…」

かすれた声でそう言った。


「オレが言ってるんだから、間違いないだろ」



真人じゃなくて…

白居先生…



そうなの……?

「それが自然だよ」

真人は付け足した。



あの笑顔は…?

あの声は…?



「早く気付いて良かったよ」

真人は立ち上がった。


あの温もりは…?



あの痛みは…?





違うの?




「真人じゃ…ないの…?」

絞りだしたような悲しみの声だった。



「……」

真人は何も言えなくなっていた。

彼の顔も、また涙で濡れていた。

琴子…


嘘だと言いたい…



本当のことを話したい…




でも…



オレはもう奪えない…




奪えない…


真人は保健室を出て行った。

2人の白居真人の関係という真実と切ない想いを隠したたまま。

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