白い吐息

「オレは、そーゆー琴子の幸せな顔が一番好きだけど?」

ドキッ…

先生の真顔の一言に頬も熱くなる。


ズルいな…
私ばかりドキドキしてる。

「たっ…食べ物じゃないものも答えてよ」

私は照れ隠しの為に強い口調で聞いた。

「ん〜…」

先生はしばらく考え込んだ。
まさか、食べ物だけ…?
悲しすぎるじゃん。


「漫画?」

何で疑問形なのよ。

「違う?」

「好きだよ。漫画…」

「…テレビ?」

「好きだけど…」

「ハートマークとか?」

「好き…」

「犬!」

「好き」

「カラオケ?」

「好き」

「祭り!」

「好きだけど……」

なんなのこれは?
みんな大抵好きなモノばっかじゃん…。

「あっ…」

先生は急に何かを思い出したような顔をして私を指差した。

「…な…に?」



「白…」


白?



「白い吐息」



先生はそう言うと優しく笑った。


白い…吐息…



「琴子、言ってたよな。好きな色は白だって」


「えっ…あぁ…」

「寒い時に吐く息の色が好きだって」



そのことか



「ほら、ちゃんと言えただろ、食べ物以外で好きなモノも」

先生は満足そうにしていた。

< 280 / 345 >

この作品をシェア

pagetop