白い吐息

「こう?」

私は香奈に言われた通りのことをやってみせた。


「気合いのポーズだよ」


気合いのポーズ?


「なにそれ?」



「私が考えた元気が出るおまじない!」

香奈は笑いかけてくれた。


「気合いのポーズ…おまじないか…」

「センスなくてゴメンね」


温かかった…

香奈の気持ちが胸にしみた…


「琴、明日ここに迎えに来るね」

「えっ?」

「一緒に学校行こう」


香奈…


「私は、琴を信じてるから」




そう言って香奈は目を擦りながら帰っていった。


信じてる…


私を必要としてくれてる…



ビンを握った右手がやけに熱かった。


先生…


私…



ひとりじゃないんだね…








その日の夜、久々に家族と夕食を食べた。
お母さんもお父さんも目に涙をためて喜んでくれた。


「…琴、見て」

食器を洗っていたお母さんが手をとめて窓の外を覗いていた。

私はお母さんに駆け寄り、外を眺めた。


「雪…」

「キレイだね。ふわふわしてる」

お母さんが窓を開けて手を伸ばす。
そして、雪の結晶を私に見せてくれた。


「……お母さん…」

「何?」

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