白い吐息
「なんで…ここに?」
驚きを隠せない琴。
「琴子こそ。今日、学校だろ?」
「私は…」
琴はうつむく。
「彼は、閉じこもってしまったよ」
彼?
「真人…が?」
「うん。悲しみのどん底にいるみたいだ…おかげで楽に身体を動かせるけど」
「どん底って?」
険しい表情で尋ねる琴。
「わからない…。オレは彼の気持ちは感情しか分からないみたいだ」
「感情?」
「喜怒哀楽」
真人は哀しんでいるの…
「琴子、彼が心配?」
白居先生は琴の気持ちを全て知ってるかのように話してきた。
「…なんで…なんで心配なんだろう…」
琴は泣くのを我慢して、口を手でおさえる。
「琴子が彼を愛してるからだろ」
「…愛してなんて…そんなの嘘だよ…私は…真人に好かれてなんていないし…どうでもいい存在だし…」
「彼が、そう言った?」
「そうだよ…」
「じゃあ、なんで彼はこんなに悲しんでいるんだろう?」
白居先生は窓辺の席に座った。
そこは、5年前のふたりの指定席だった。
「知らないよ…」
琴はストーブの前から離れなかった。
「…琴子」
懐かしい声にドキっとする琴。