白い吐息
「しないよ。彼に私は必要ないもの」
「もし彼が、君を必要としていても?」
「…」
琴は視線を少し落とした。
「オレと一緒に行く場所は地獄だぞ」
「…もしもなんて…ない」
「真人くんには美しい未来が待ってるかもしれなくても?」
「…かもなんて、私には関係ない。彼は…白居くんは…私を愛していないもの」
震える唇が自分に言い聞かせるように言葉を重ねていた。
「本当にそう思うのか?」
「…うん」
違うよ─
違うよ琴子─
オレは…─
嘘をついた─
オレは…─
真人さんに、沢山の借りがあるから…─
決して償えないことをしてしまったから…─
忘れたくても忘れられなかった─
忘れてはいけないと思った─
君に出会うまで…─
「琴子、真人くんが目覚めたがっているみたいだ」
「え?」
「もうすぐオレはこの身体を使えなくなる」
白居先生は淋しそうに言った。
「先生…」
「琴子、君が自分で考えて決断するんだ」
琴子…─
君の愛してた人は、本当に優しい人だった…─