白い吐息

父はあなたを本当に愛している。


多分、僕より。



だって、あなたは父が本気で愛した人の子供だから。

真人…


あなたを愛しているから、忘れたくないから、毎日呼んでいたいから、この名前を僕に付けたんだ。


父は、きっと真人さんに会社の跡を継いで欲しかったんだ。



森下さんたちが離れていかなければ、きっと真人さんが今頃父の隣にいたんだ。


きっと、幸せだったと思う。






父の会社は祖父と友人の森下さんの2人で設立した。


しかし、互いの意見の違いから森下さんは会社を離れていった。



当時、父は22歳。


2つ年下の森下さんの孫娘と愛し合っていた。
しかし、森下さんが会社から離れることになり、2人は引き裂かれる形となった。


2人は…

ロミオとジュリエットにはなれなかった。



互いの家族を守る為、別れを選択した。

2人とも家族をとても愛していたから。




しかし、


その時すでに、森下さんの孫娘のお腹の中には子供がいた…。



それが真人さん。



そう、

父が本気で愛した人の子供。




父は、その愛しい子供とその母に白居の姓を与える為、内緒で入籍した。

< 309 / 345 >

この作品をシェア

pagetop