白い吐息
父はあなたを本当に愛している。
多分、僕より。
だって、あなたは父が本気で愛した人の子供だから。
真人…
あなたを愛しているから、忘れたくないから、毎日呼んでいたいから、この名前を僕に付けたんだ。
父は、きっと真人さんに会社の跡を継いで欲しかったんだ。
森下さんたちが離れていかなければ、きっと真人さんが今頃父の隣にいたんだ。
きっと、幸せだったと思う。
父の会社は祖父と友人の森下さんの2人で設立した。
しかし、互いの意見の違いから森下さんは会社を離れていった。
当時、父は22歳。
2つ年下の森下さんの孫娘と愛し合っていた。
しかし、森下さんが会社から離れることになり、2人は引き裂かれる形となった。
2人は…
ロミオとジュリエットにはなれなかった。
互いの家族を守る為、別れを選択した。
2人とも家族をとても愛していたから。
しかし、
その時すでに、森下さんの孫娘のお腹の中には子供がいた…。
それが真人さん。
そう、
父が本気で愛した人の子供。
父は、その愛しい子供とその母に白居の姓を与える為、内緒で入籍した。