白い吐息
理由は分からないけど…。
同じ名前を持つ弟を放っておけなかった。
父親のことも気になっていた。
母が愛した男だから。
でも、彼から話を聞く限りでは、とても愛されるような人物に思えなかった。
父は…
変わってしまったのか?
会社のせいで?
母のせいで?
オレのせいで?
彼と4つの季節を共にした。
下らない話ばかりしてたけど、彼はオレに心を開くようになってくれた。
友達や学校の話。好きなもの嫌いなものの話。テレビで話題になってるものの話や日常生活のどうでもいい話。
中でも一番盛り上がった話は、オレの片想いの話だった。
オレは教師でありながら、教え子に恋をした。
彼女の名前は長谷川琴。
通称、琴子。
高校3年の受験生。
なのに部活を辞めないでオレの側にいてくれた。
素直で優しい琴子。
疲れた心をいつも癒してくれた。
その日も、いつものように科学室で琴子と2人。
マンツーマンで勉強を教えていた。
そんな時、携帯に一本の電話が入ってきた。
あいつからだった。
奴は小さな声で呟いた。
「さよならが言いたい」
と。