白い吐息

僕は…

落ちるのか…?!



死ぬのか…?!




「嫌だ!」

声を張り上げた瞬間、僕は思わず柵を手放してしまった。


…!!



「真人!」


足がよろけて、足場スレスレに滑った瞬間、誰かが僕の手を掴んでくれた。



「…まっ…」


真人さん!





「大丈夫だ!離さないから…」



真人さん…




「しっかりしろ!!」





良かった…



来てくれた…




僕は…



僕は…



ひとりじゃない…







安心した、その瞬間。



ガクっと力の抜けた足が校舎を離れた。





「真人ー!」




僕の手が…


真人さんの左手に握られていた僕の手が…



スルリと抜けて、僕は…




僕は…









白い闇に消えた─





遠くで声がした。


真人さんの叫ぶ声…











闇の中で救急車のサイレンを聞いた。




不思議だった…


サイレンが二重奏しているようだった…















やがて、手に温もりを感じた。

真人さんの手じゃない、他の誰かの手…。



その手が僕の手を強く握っていた。

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