白い吐息
父さん…
小さいとき、家族で遊園地に行ったとき、迷子にならないように、父さんはずっと手を握っていてくれたっけ?
そう…
この手は父さんの手だ。
母さんの匂いがする。
母さんも一緒にいるんだ。
嬉しいな。
真人さん?
真人さんは…?
僕は知らなかった。
真人さんが事故にあったこと。
僕を助けるために、事故にあったこと。
同じ病院に搬送されたこと。
そして父が、
真人さんではなく、僕のそばにいたこと。
そのまま彼が息を引き取ったこと…。
大きな過ちを犯した
償えない罪
僕はあの人から
全てを奪ってしまった
名前も
親も
命も…
そして…
彼女も奪うところだった
「琴子」
そう呼ぶたび、あの人の切ない想いを感じた
あの人が僕の中に生きていたことは
なんとなくわかっていたから
だって
あの事故以来、僕は変わっていったから…
左利きになり
性格が明るくなり
そして
どこかで彼女を探してた