白い吐息
落下していった。




そう


あの日の真人のように。





真人の目にはその光景がスローモーションのように見えた。






小学校よりも高い校舎。

琴はまるで空に吸い取られるように消えていった。





琴子…?





琴子…






琴…子…









「こと──────!!」





まさに絶叫だった。

目を点にして座り込みながら叫ぶ真人。



息が…出来なかった。









なんで…





なんで…







どうして……












やがて下からも悲鳴が聞こえた…。









『昔に戻りたい』

『家族が仲良かった頃?』

『うん…』

『無理だよ…時間は戻せない』

『そんなの…僕だって分かってるけど…』

『オレは今が一番幸せだよ』

『…例の生徒さんがいるから?』

『それもあるけど、お前に会えたから』

『…僕…に?』

『運命って…嫌いなんだ。でも、もしもお前や彼女に出会うことが運命だったんなら、オレは神に感謝するよ…』

『運命…』

『もしかして運命は運ばれる命じゃなくて、運ぶ命なのかもな』

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