白い吐息

『オレも』



『絶対…忘れないよ』



『うん…』





『忘れないからね…』





『わかった』








『冬が…冬が来たら、空にいっぱい息を吐くから…』


『息?』





『私が幸せな分だけ、白い息を吐くから。…だから、ちゃんと見ててね』





『うん。ちゃんと見てる』






『…先生』







『さよなら…琴子』




『……さ…さよなら』






『そんな悲しい顔すんな!』


『はい!』






『バイバイ琴子』




『バイバイ先生』









『バイバイ…』












さよなら…





さよなら先生…









さよなら…私の初恋…











さよなら







さよなら












そして







ありがとう…












コンコン…

真人は病室をノックした。
返事が返ってこないのを知りながら。



「し…失礼します」

部屋に入り、そっとドアを閉める。

真人の腕にはバラの花束が抱えられていた。


ベッドの横に来て、琴の顔を確認する真人。


「…泣いてる」

< 325 / 345 >

この作品をシェア

pagetop