白い吐息
エピローグ 〜Thanks〜
I love Koto.
男性教師は黒板にそう書いた。
「これは、どんな意味でしょう?」
誰も居ない生物室で、真人は独り言を言いながら振り向く。
「そうです!私は琴を愛してるって意味ですね」
それは、もはや一人芝居だった。
琴が旅立って既に5年が経っていた。
彼女からの連絡はない。
日本に帰って来ているのかさえ分からなかった。
真人は高校教師になっていた。
そして偶然にも母校に赴任。
自らが設立した「外国語研究部」の顧問になる。
しかし部員はやはり幽霊だった。
真人は一年間は琴を待ち続けた。
それからは欲を満たすため大学で何人か彼女を作ってみたが、どれも上手くいかず、結局、琴の存在の大きさに気付かされる毎日を過ごしていた。
「白居先生、素敵だね」
誰もいない教室のはずなのに、真人はそんな言葉を耳にした。
聞き覚えのある声…。
「Have you been waiting long?」
長い間待った?─
その声が聞こえる方へ真人は目を向ける。
「Are you mad at me?」
怒ってる?─
ドアの前に彼女は立っていた。
そう
それは間違いなく琴だった。