白い吐息
共通点 〜Sign〜
「ふぁ〜…」
早朝の職員室でクリームパンを食べながら、琴は大きくあくびをした。
朝からあんなことがあったので本当は食欲がない。
なるべく思い返さないようにしている琴だが、真人の身体の温かみがリアルに脳に刻みこまれている。
「キスって…」
目をつぶって額に手をあてた。
「キスがどうかしましたか?」
「へっ!?」
琴が慌てて目を開ける。
隣の席の森下宏樹先生がカバンを机に置いて琴に微笑みかけている。
「おはようございます長谷川先生」
「あっ…おはようございます」
森下先生は2年の英語を担当していて、真人のクラスの担任でもある。
見た目は真面目そうな雰囲気なのだが、浮わついた噂の多いかなりのプレーボーイらしい。
28歳独身。
俳優のような切れ長の目でモデルのようにスタイルがいい。
ホストの経験があり、昔、女子生徒と関係があったとかないとか。
そんな噂もあってか、琴はこの森下先生があまり得意ではなかった。
ただ、隣の席で、同じ教科を担当しているものだから喋る機会が多かった。
「長谷川先生がこんな早い時間にいるなんて珍しいですね」
「はっ…はぁ…」
余計なお世話よ、と言ってやりたかったが、そこは大人らしく必死に堪えた。
「何かありました?」
琴の顔を覗き込む森下。