白い吐息


白居真人



琴はその名前を震える指で優しくなぞった。


見覚えのある名前…

懐かしい名前…

そして



とても愛しい名前…




琴の目に涙が溢れてきた。
彼女はとっさに涙をぬぐった。
そして小さく深呼吸をする。
生徒たちは不思議そうに琴の姿を見ていた。



「シライマナトくん」


つばを飲んで、やっと口に出来た名前。
なぜか彼だけがフルネームで呼ばれた。





「はーい」




大きな瞳にふっくらした唇、整った鼻筋、白い肌にちょっとソフモヒな柔らかそうな茶色の髪。
机の上に胡坐をかいて手を振っている少年はカッコいいというより可愛い系の美男子だった。

「スゲーな先生…」

その美少年の隣に座る男子が喜んでいる。

「…何?」

「こいつの名前、1回で読めたの先生が初めてだよ。なぁ?」

と彼を指差しながら言った。

「うん」

美少年…もとい白居真人はくしゃっとした笑顔をみせた。
その表情に琴は胸の痛みを感じた。
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