白い吐息
「私…変…」
胸に手をあてる琴。
鼓動が早くなっているのを感じた。
その頃、真人も自室の姿見の前に立っていた。
10畳以上ある広い個室。
壁紙は真っ白で家具は黒のシンプルなものが少し置いてあるだけだ。
「なんでだ…」
ふさぎ込んだ表情を浮かべ静かに語る。
鏡を見ていた目が左手を捕らえた。
手のひらを見つめる真人。
「何かが変だ…」
コンコン…
扉を叩く音で我に返る真人。
「はい…」
「真人、紅茶入れたけど飲む?」
扉の向こうで母親が問い掛けた。
「ごめん母さん…今はいいよ」
「そう」
「母さん」
「何?」
「父さんは?」
「…分からないわ。今晩も遅くなるみたい」
「ごめん」