白い吐息
準備室の方で音がした。
琴は恐る恐る準備室を覗き込んだ。
「あっ!先生」
準備室の中で真人が立っていた。
「……」
「先生、今日も遅刻だね」
琴を指差し微笑む真人。
しかし、琴の顔は硬直していた。
「先生?」
「…どうして?」
琴が小さく呟いた。
「えっ?」
「何で…白衣…着てるの?」
声を震わせる琴の前には、白衣を身にまとった真人がいたのだ。
「あぁ、そこに掛けてあったから。1度着てみたかったんだよね」
笑顔の真人に対して、琴の表情は強ばったままだった。
「あ……。無断で着たら怒られるよね」
真人は琴の目を見て、焦ったように白衣を脱ぎだした。
「ホントは、人体模型が見たかっただけなんだ…」
慌てて白衣を片付け、真人は準備室から飛び出した。
「ごめん…私、怖い顔してた?」
うつむいて顔を隠しながら琴が喋った。
「………うん…」
真人は素直に答える。
「白居くんは何も悪くないの…ただ…」
「ただ?」
「白居くんが、あまりに彼と同じことするから…びっくりして」
うつむいたままの琴。
「彼って……好きだった人?」
「うん…」
「そっか…そうなんだ」
真人も下を向く。