白い吐息
真人は緊張した様子で琴に尋ねた。
そんな彼の顔を見て、琴はゆっくりコクリと頷いた。
真人が両手で覆うように優しく琴の身体を包む。
そして大きな手で彼女の髪を撫でた。
琴は戸惑いながら真っ赤になった顔を真人の胸に寄せる。
琴の耳に真人の心臓の音が響いた。
「…白居…くん…ドキドキしてる…」
「先生も…してるじゃん…」
真人の胸にも琴の鼓動が伝わっていた。
やがて琴は真人の背中に両手を回した。
「先生?」
「私…あの人のこと忘れられるかも…」
夕日に照らされて、抱き合う2人のシルエットが床に伸びる。
それはとても美しいものだった。
「ありがとう」
真人がそっと彼女を解放する。
「ううん」
首を振りながら、琴はどこか物足りなさそうな顔をしていた。