白い吐息
「先生…?」
「何?」
「2人でいるとき…」
真人は照れ隠しの為、髪をいじる。
「2人でいるとき?」
真人の言葉をなぞる琴。
「……真人って呼んで欲しい…」
目を泳がしながら、甘えるような顔で訴えた。
「………わ…かった」
震える唇で承諾する琴。
「オレも…名前で呼んでいい?」
「えっ?」
「嫌ならいい!」
挙動不審になる真人を見て、琴が笑った。
「2人のときだけね」
「いいの?」
琴が頷く。
「……こっ…琴…?」
「呼びづらい名前でしょ?」
真人は一生懸命、首を振った。
「琴子って読んで」
「琴子?」
「うん」
琴はわざと白居先生が使っていた呼び方を真人に求めた。
この呼び方が気にならなくなった日、白居先生を忘れることになるだろうという思いを込めて決意した。