白い吐息
「はぁ…仮眠ですか…」
さわやか笑顔に不気味さを覚える琴。
「長谷川先生も、よくここで寝てらっしゃるでしょ?」
「えっ…まぁ…時々」
「長谷川先生の香りがしてなかなか寝付けませんでした」
「はっ?」
動揺する琴。
森下はベッドから立ち上がると扉の方へ向かった。
「とても興奮してね」
妖笑を浮かべる森下。
琴は背中がゾクッとした。
「あっ…あの…私、ここの鍵を閉めたいんですが?」
静かに喋る琴。
「大丈夫、鍵なら僕が閉めますから」
と言って、森下は内側から鍵をかけた。
困惑する琴。
「うちの白居が大分お世話になってるみたいですね」
「えっ…いえ。部活ですから」
戸惑いながらも、森下の質問に答える琴。
身体は小刻みに震えていた。
「白居には関わらない方がいいと言いましたよね」
それは森下の今朝の言葉。
「でも…大事な生徒ですし…」
決して森下と目を合わせない琴。
「生徒ね……」
森下の表情から笑顔が消えた。
「はい。森下先生のクラスの生徒さんじゃないですか…」
「僕のクラスの大事な生徒か…」
森下は呟きながら琴の方へ歩みを進めた。
「家の事情とか…そんなの…どうでもいいことです…」
「長谷川先生、今はそっちの話はどーでもいいんですよ」
「えっ…」
森下は琴を壁ギリギリまで追い詰めた。