白い吐息
「イヤー!」
琴の身体に重くのしかかる森下。
「わめいても無駄ですよ」
森下の冷酷な発言の通り、この保健室は職員室からかなり離れた所にあった。
「助け…」
叫ぶ琴の口をまた唇でふさぐ森下。
琴はまったく身動きが取れなかった。
愛のない口付け。
白居先生を想って、5年間ずっと守ってきたファーストキス。
それを考えると心にナイフが刺さったような気持ちになった。
こんなことなら…
琴の頭に浮かぶのは、夕日に染まった真人の美しい横顔だった。
優しく抱きしめてくれた温もりがまだ残っている。
森下のものとは全く違う。
髪を撫でられた感触が忘れられない。
森下のものとは全く違う。
森下の唇が離れた瞬間、琴はポツリと零した。
「真人……」
それを聞いた森下は更に不機嫌な顔をして琴の髪を力強く掴み、勢いよく引っ張った。
「イタッ…やめ…」
琴の溢れた涙がベッドを濡らしていく。
「長谷川先生…オレを怒らせたね…最初はただ遊んでやるつもりだったんだ…」
またも顔つきを変える森下。
「……?」
「自分が脅されていることを忘れないようにするんだな」
と、言い終わると、森下の右手が琴の胸の膨らみをとらえた。
イヤ!
更に森下はその手に力を加えた。
「いっ…いや――――!!」
琴の悲鳴と共に仰け反る身体。
そのときだった…
「先生!!」
振り返る森下。
「白居!?」