白い吐息
琴が重たい目蓋をあける。
その目に飛び込んできたのは白い天井だった。
「…保健室?」
「その通り」
呟く琴に間髪入れず返事をしたのは、養護の関口先生だった。
「あれっ!?私…?」
「何、今更驚いてるのよ。驚いたのは生徒の方なんだからね」
「生徒…?」
「やだ、覚えてないの?2-Bの教室で倒れたの」
関口先生は電気ポットのお湯をカップに注ぎながら言った。
「……あっ」
「思い出した?」
「…はい……」
「ほら、ミルク」
ベッドに座る琴に関口先生は温かいカップを手渡した。
「ありがとうございます」
カップを受け取ると、琴は目を閉じて、湯気をスーッと吸い込んだ。
「白居くんと戸部くんが、ここまで運んでくれたのよ」
「白居…?白居…真人…」
「そうよ。あの子イケメンよね」
関口先生は笑いながら煎餅の袋を開けた。
「……」
琴はカップの中に目を落としたまま固まっている。
「私も、あんな子におんぶされたいわ〜。こんなデブおばちゃんじゃ無理かしらね♪」
「おんぶ!?」
突然、我に帰る琴。
「白居くん、ここまであんたをおぶって来てくれたのよ」
「……マジっすか?」
「嘘ついてどーすんのよ。後でお礼言いに行きなさいね」
煎餅をバリボリ食べる関口先生の横で琴は困った様子で額に手を当てていた。