白い吐息
「白居家の秘密、例の事件、そして今日新たに仕入れたネタ…。お前がこの高校に居れるのはオレがいるからだというのを忘れるな」
「脅迫かよ…」
真人は唇を噛み締める。
その後ろでは琴がまだ震えていた。
「長谷川先生、白居に関わると痛い目に合いますよ。今日みたいにね」
そう言うと森下はクスクスと笑った。
「テメ…」
真人の腕が森下を殴りたがっていた。
琴はそれを察して、彼を背中から強く抱きとどめていた。
「あなたとはこれからも教師として上手くやっていきたいんですから」
「ふざけんなよ…」
「ふざけてるのはお前だろ白居。立場をわきまえろ」
「あんた意味分かんねぇんだよ!」
今まで聞いたことのないような真人の荒々しい声が保健室に響いた。
「オレも分からないよ…」
森下はそう呟くと、鍵を開け扉を開いた。
意味深な呟きに疑問の表情を浮かべる真人。
琴はそんな真人の背中に抱きついたままでいた。
森下はそそくさと保健室を後にした。
しばしの沈黙が流れる。
「…ありがと」
先に口を開いたのは琴の方だった。
「大丈夫?」
真人が優しく振り返る。
琴はまだ震えていた。
「とにかく、ここから出よう」