白い吐息

伝わってくる震えから、その言葉が真人の本心だと感じ取る琴。
彼女は優しく彼の髪を撫でた。
本当は真人を抱き締めたいという気持ちでいっぱいだった。
だけど、今はそれをしたくなかった。
琴の中の感情が荒い音をたてて渦を巻く。

「私…もうPureじゃないんだ」

彼女は無表情で呟いた。

そんな琴を見上げる真人。

「もう…汚れたの」

真人の手に涙が落ちた。

たかがキスひとつ。
しかし、琴にとってはとても重いものだった。
大切な硝子の宝石箱をハンマーで粉々にされた気分。
琴の涙の粒がポロポロと真人に落とされる。
暖かいのに冷たく感じる涙を、そして悲しげな瞳を真人はジッと見つめた。

「アイツ…?」

「ダメだね私…隙だらけだったんだね」

琴は無理して笑顔を作った。

「待ってて」

真人が琴の手を離し、流し台に駆け寄る。

ガス栓をひねり、湯沸器から熱いお湯を流した。
琴の元へ急いで戻る真人。
その手には湿ったタオルが握られていた。

「真人…?」

見上げる琴。

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